脳梗塞の功罪
2025.01.08
文・写真:代表取締役 山本清
長年の不摂生がたたり重い脳梗塞になりましたがお医者様や
看護師さんのおかげでなんとか復帰でき感謝しています。とこ
ろで病気になると悪い面ばかりが取りざたされがちですが、今
回倒れてみて私が経験した功の面について少しお話いたします。
要点は三点あり、まず一点は50年間悩まされてきた腰痛がピ
タッと治ったことです。病院嫌いの一因はとにかくベッドに横
になって寝れないことで病気よりそっちのほうが心配なくらい
でした。手術するしかないと思っていましたが、なんと脳梗塞
で倒れた翌日から痛くなくなったのです。何日か経っても平気
でベッドに横になっていられるのです、これは新鮮な驚きでし
た。まさか脳梗塞によって腰痛から解放されるとは夢にも思い
ませんでした。
次の一点は、たばこを吸っていたことを忘れてしまったこと
です。禁煙ではありません、たばこに興味が無くなってしまっ
たのです。おかげで50年以上吸い続けてきたのですが何の苦
労もなくたばこ中毒を解消できました。たばこを吸うという習
慣を記憶していた脳細胞(あるいはネットワーク)が消滅した
ものと思われます。
もう一点は、片耳がほぼ聞こえないほどの急性難聴だったのですが、入院して一週間ほど経って音が聞こえていることに気が付きました。聴力は完全とはいきませんがほぼ正常に聞こえるようになりました。年相応に高音は弱いですが日常生活にはなんとかなるレベルにまで回復して、こちらもびっくりしました。耳鼻科の開業医からは年だから治らないと言われていたのに補聴器屋さんからは聞こえなくてもとにかく補聴器で音を鳴らすようにしないと脳が受け付けなくなると言われていました。さてどちらが正しかったのでしょうかね。私の体験からは脳が音を聞くように再生したように思われます。
これらの体験を振り返ってみると、どうも脳梗塞になって脳細胞が死ぬとそれを補うべく周囲の脳細胞が活性化するのではないかと思えます。あたかも幼児の脳が徐々に成長していくように、私の脳も再生あるいは再構成したのではないでしょうか。そう考えると頑固な腰痛も実は脳が作り出した幻覚だったのかもしれません、どうりでマッサージや痛み止め治療をしても治らないわけです。若いころは毎年ギックリ腰になり救急車で病院に担ぎ込まれていましたが、少しも改善しませんでした。それも今にして思えば当然のことで、脊髄損傷もあるにはあるのですが痛みの真の原因は脳にあり脊髄ではなかったのです。脊髄を手術しなくてよかったとつくづく思います。難聴も同じことで、最大の原因は器官の老化ではなくて脳が音を聞いていなかったのだと思います。それが脳の再生の過程で耳鳴りを解消させ左右同じ大きさに聞こえるように再生したのでしょう。聴力だけに限らず脳の活動全体が脳梗塞のショック状態から元のレベルに回復してゆく力を持っているのでしょう。喫煙の習慣もそれで治ったのでしょう、生まれつきニコチン中毒という赤ん坊はいないでしょうから・・。あるいは入院した当初は幼稚園並みの知能レベルでしたが一カ月もたつとほぼ元の知能レベルに復活しました(といっても元が元だけにしれていますが・・)。幸運では済まされないなにか不思議な感じすらします。自然治癒力、恐るべし。
そんなわけで病気には功罪両面があるなと思います。さらにウィルスが遺伝子に合体して環境への適用にも大きな効果をもたらしているのかもしれません。それを進化と呼ぶかあるいは退化と呼ぶかは人によってちがうとは思いますが、少なくとも「変化」といっておけば無難かと思います。昨今の無条件に進化と呼ぶ風潮はどうかと思います。また反対にウィルスや病気を極端な悪者扱いするのもどうかと思います。両者が一体となって共存しているのが実態に近いのではないでしょうか。
さて自然治癒力をひきだすのに看護師さんや理学療法士さんの
力が欠かせません。認知が進んで治療を受けつけない患者などは
根気よく対応する看護師なしには生きられないと言ってもいい場
合もありました。スプーンをくわえて離さず食事を拒否するおば
あさん、呼吸器を外してしまうおじいさん、病院には普段はけし
てお目にかかれない地獄のような世界が広がっていました。そん
な状況の中で患者と同じ目線に立ち思いやりを持って励ます看護
師さんによってどれだけ多くの患者が救われているでしょう。苦
しいリハビリも療法士さんの声掛けがあればこそです。私もわず
かな後遺症が残るまでに回復したのも大勢の医療関係者の見守り
があったればこそだと感謝しています。そこで及ばずながら今後
は少しでも患者の生活の質を向上する道具を開発しようと思うよ
うになりました。自分のつたない入院や病気の体験を活かして役
に立つものを開発しようと考えています。
下図写真は、現在開発中のドレナージバッグハンガーです。
人工膀胱装置の夜間用の増設蓄尿袋(ウロバッグ)をベッドのテスリに吊り下げるときに使うハンガーです。使いやすく能率もアップします。